有限会社道建設

耐震、断熱改修など大規模、高難度のリフォーム工事のご相談は、道建設まで。

耐震改修

1.広島で発生する可能性のある地震

地震の発生原因には、(1)内陸部の活断層のずれによって発生する地震(例:阪神淡路大震災)と、(2)プレート境で発生する地震(例:東日本大震災)とがあります。

広島でも過去に地震による被害(※1)を受けたことがあり、今後も(1)五日市断層帯や安芸灘断層帯、岩国断層帯、(2)南海トラフ地震や日向灘および南西諸島海域で発生する地震などの影響を受ける可能性が心配されます。

ところで気象庁が発表している資料に、震度階級関連解説表(※2)があります。震度階級に対する建物への影響度合い(被害)の参考資料になります。

2.建物チェック

東日本大震災や広島で発生した土砂災害(平成26年8月)、今後発生が予想される南海トラフ地震などから、国土交通省は「安全安心」を最重要課題として取り上げています。

こうした状況もあって、既存木造住宅の耐震診断・耐震補強が国の施策としても推進されています。住宅の耐震化率は、平成20年時点で約79%ですが、目標として平成27年までに90%、平成32年までに95%に上げることが掲げられています(※3)。

本格的な耐震診断を行う前に、簡易的な建物チェックのための項目をいくつか準備しました。いずれかの項目に当てはまる場合には、次項以降に記載する耐震診断を行うことをお勧めします。また耐震診断の結果、耐震性に不足が確認された場合には、必要に応じた耐震補強工事を行うことをお勧めします。

【簡易チェック項目】

(1)建築年が、昭和56年(1981年)5月以前である。

(2)今までに大きな災害に見舞われた。

(3)増築を行っった際に、壁や柱の撤去を行った。

(4)木部の腐食、シロアリ(※4)の被害が確認できる。

(5)建物が複雑な平面形状(Lの字・Tの字等)をしている。

(6)1辺が4mを以上の吹抜けがある。

(7)2階の外壁の真下が居室または室外になっている。

(8)1階外壁の東西南北各面のうち、壁が全く無い面がある。

(9)比較的重い屋根葺き材(瓦等)で、1階の壁量が少ない。

(10)基礎が「鉄筋コンクリートの布基礎またはべた基礎・杭基礎」以外である。

3.耐震診断

耐震診断を行うにあたっては、まず建物調査を行います。屋根裏や床下等に入り、(1)耐力要素の確認、(2)構造上支障のある被害・劣化の確認を行います。
大地震の被害では、構造材料の劣化が原因で建物被害が大きくなった場合も多くあります。屋根や外壁の劣化やクラックによる雨漏りが原因で、構造材が劣化しているケースもよくあるため、しっかりと確認する必要があります。雨の侵入箇所の補修を行うことや、建物の全体の通気を良くし、乾燥させた状態を保つことは、構造材料等の劣化を防ぐ有効な手段にもつながります。

調査結果を基に耐震改修促進法(※5)に則った専用のプログラムを用い耐震診断を行います。

弊社では診断結果を分かりやすく数値化して説明しており、補強が必要な場合は、耐震補強計画を作成しています。

耐震診断には、①一般診断法と②精密診断法という流れがあり、どちらの診断方法も一長一短があります。

項目 メリット デメリット
①一般診断法 安価で診断できる。 診断の精度が低い。
検査のために破壊しなくても良い。 安全率が高く必要以上の診断結果になる場合がある。
②精密診断法 より詳細な診断が出来る。 診断費用が高い
過大な補強を行わずに済む。 検査破壊した場所の補修が必要。

上記結果いずれの診断方法においても、倒壊の危険度を数値で表し判定します。

上部構造評点 判定
1.5以上 倒壊しない
1.0以上~1.5未満 一応倒壊しない ※震度6強程度を基準とする。
0.7以上~1.0未満 倒壊する可能性がある。
0.7未満 倒壊する可能性が高い。

耐震診断は、極めてまれに(数百年に一度)発生する地震動に対し、倒壊の可能性を検証するものです。耐震性を高めることによって、大地震時の住宅の倒壊による人的被害を減らすことが主たる目的であり、住宅の倒壊を防ぐことができても建物の損傷を軽減できるとは限らない点には注意が必要です。

4.補強計画

(1)地盤、基礎の耐震補強
住宅が建つ敷地の地盤や基礎は、上部構造の耐震要素が設計上の性能を発揮でき、建物が受けた地震力を伝えられるだけの性能を確保する必要があります。

軟弱地盤の場合、建物の振動が大きくなる為、十分な壁量を確保するとともに鉄筋コンクリート造のべた基礎や布基礎を用いるなどの配慮が必要です。地盤の悪い場所では、地震時の性能が上部構造で確保されていたとしても、時間の経過と共に不同沈下が起こり、建物が傾斜する場合があります。そのような地盤においては、日常の生活に支障をきたさぬよう、地盤改良が必要な場合があります。

ひび割れのある鉄筋コンクリート造の基礎や無筋コンクリート造の基礎には、下記のような耐震補強の方法があります。

1.ひび割れの補修を行う。

2.無筋コンクリート造の基礎は、鉄筋コンクリートの布基礎と抱合せることで補強を行う。

3.無筋コンクリート造では局所的に強い壁を用いず、耐震要素をバランスよく配置する。

その他にも、弊社がよく手掛けている伝統工法(※6)の住宅(古民家)では、基礎が束石の場合がほとんどです。過去の地震では、建物が揺れた際、基礎の束石から外れてしまう柱があり、建物が歪んでしまう被害が多くありました。このような場合に、床下で柱同士を繋ぎ一体化することで、柱が束石から外れてしまうのを防ぐ方法も有効な補強策であると考えます

(2)上部構造の耐震補強策
上部構造の耐震補強策には、以下の3つのポイントがあります。
①耐力要素の追加
②躯体の接合部の補強
③床・屋根の剛性確保
家全体の改装を行う場合、間取り変更と同時に耐力要素の追加などの耐震補強を行うことができます。リフォーム工事と同時に耐震補強を行う場合、コストを抑えて施工することも可能です。逆に改装を行わない部分で補強が必要になった場合、補強が必要な箇所の解体を行う必要が生じるため、補強に使用する部材を選定することでコストを抑えた補強方法を採用することも可能です。
木造住宅の主な工法は、伝統工法(※6)と在来工法(※7)に分けられます。それぞれの工法の特徴を勘案すると同時に生活スタイルに合わせた耐震補強を検討することが重要です。比較的容易にできる補強策

①テレビ置場として必要な壁
②寝室などプライバシーを確保したい部屋の壁
③収納を追加するための壁
等といった生活に必要となる壁を追加した部分に耐力壁を設置することが可能です

(3)耐力壁設置のポイント
耐力壁設置は、東西南北均等に設置されていることが重要となります。

古民家特有の田字型間取りでは、南側のほとんどが開口であるため耐力要素が不足がちですが、以下の方法で補強を行います。

南側にもあるわずかな壁を活用します。
・南側にある玄関や大戸脇にある壁を耐力壁にする
・雨戸の戸袋部分の壁を耐力壁にする

生活に影響のない部分を壁にします。
・縁側(廻廊下)の角に壁を追加
・母屋に接続された離れや蔵を補強し母屋の耐震性を上げる

(4)躯体の接合部の補強

柱と鴨居など接合部が外れてしまうと耐力を発揮できなくなります。
・力が大きく加わりそうな接合部を判定し、補強を行います。

伝統工法の場合、太い柱(断面が5寸柱以上)は耐力要素として耐力を発揮しますが、細い柱(断面が4寸柱以下)は大地震の際、折れてしまうことがあるので、折損しないよう対策をとります。

(5)床・屋根の剛性確保
床や屋根が板敷の伝統工法は、剛性が低い(建物がねじれ易い)といわれています。弊社では民家再生の際に、改修を行う部分は構造用合板で床下地をつくることで剛性を確保するようにしています。

(6)耐力要素の追加
昭和56年以前に建てられた建物は、建築基準法で求められていた耐力壁の量が少なく、耐力要素の少ない木造家屋として該当します。
・間取りの変更と同時に壁を追加する部分に耐力壁の設置

・耐力壁に必要な金物の設置による強度アップ

・強度の高い耐力壁の利用

開口が必要で耐力壁が間取りに影響する場合は、開口を潰さず補強ができるブレースタイプ(鋼製の棒状のもの)や門型ラーメン(開口の周りを補強する工法)などの採用により、間取りと耐震補強の両立を図ることができます。

躯体の接合部の補強

昭和56年以前の木造家屋では、躯体の接合部や耐力壁に必要な金物が入っていない場合があります。建物調査等に金物の有無を確認し、適切な金物補強を行う必要があります。
また、金物が設置されていても、本来必要な金物のとは異なる種類が付いている場合があります。調査時に確認し、強度不足であった場合交換します。

床・屋根の剛性確保

床の剛性を確保することで、耐震性を高めることができます。
床の改装を行う際、新たに構造用合板を貼直すことで、床の剛性を確保し建物全体の一体化を図ります。

・その他補強計画
耐震要素を増やすことが出来ない場合には、屋根の軽量化や減築によって建物の重量を減らすことによって耐震性を向上させることが出来ます。

また、瓦や外壁は、雨漏りが発生していると留付け部分が劣化し、脱落する可能性があります。また、ブロック塀も大地震時に崩壊し易いため、ブロック塀には控え壁をつけるなどの対策が必要となります。

5.補強工事

耐震診断により、現状の耐震性能を検討し、必要な耐震補強を行う上で、全面改装工事・部分改装工事それぞれに適した方法・補強部材を選択します。

補強部材色々

鋼製ブレース 木製ブレース
鋼製ブレーズ 木製ブレーズ
制振ダンパー 耐震パネル
制振ダンパー 耐震パネル
抱合せ基礎補強 アラミド繊維基礎補強
抱合せ基礎補強 アラミド繊維基礎補強

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リンク
※1 広島県防災WEB「災害に備えて:地震・津波災害とは」
http://www.bousai.pref.hiroshima.jp/

※2 気象庁「震度階級関連解説表」
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/shindo/kaisetsu.html
木造建物が地震により受ける被害の想定が記載されています。ここでも昭和56年以前の建物は耐震性が低く、昭和57年以降は耐震性が高い傾向があると記載があり、昭和56年が耐震性を判断する際の一つの境目になっています。

※3 国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」

住宅の耐震化の進捗状況と目標。http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_fr_000043.html

※4 シロアリの被害の調査
床下から確認できる範囲で行い、点検報告書を作成します。

※5 耐震改修促進法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=407AC0000000123

※6 伝統工法
弊社が改修を得意とする古民家の工法で、太い柱に貫や鴨居を差込んで建物を構成している工法です。差込んである木組みのかみ合わせと貫の表面に仕上げる土壁が主な耐力要素となっています。

※7 在来工法
柱・梁は建物の柱・梁は建物の重量を支える役割として、耐力要素に壁を設けて強度を確保している工法です。
築年数により耐力要素の壁が不足している場合があります。